Z.VEXで音と足下を彩る!
個性的なサウンドとデザインで知られる、アメリカのZ.VEX(ジーヴェックス)・エフェクター。そのZ.VEXからエフェクト・ボードにセットしやすい縦型モデルが続々と発表されている。今回は、その中から最新のファズなど計5機種に迫った。他にはない音とデザインを求めるギタリストは注目だ!
※WeROCK 066の掲載記事より。
マーシャル JTM45のフル10サウンドを再現したディストーション
Box of Rock Vertical ¥34,000+税
〈仕様〉 ●コントロール:ブースト、ヴォリューム、トーン、ドライヴ、ブースト・スイッチ、ロック・スイッチ ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:66(幅)×51(高さ)×110(奥行き)mm
Z.VEX(ジーヴェックス)というエフェクター・ブランドになじみがなくても、この個性的なカラーリングが気になっているギタリスト、あるいは目にしたことがあるギタリストは多いはず。そのZ.VEXからヴァーティカル・シリーズの名のもと、さまざまなモデルが新たに発売されている。これは、横長の筐体が多かったZ.VEXのペダルだが、エフェクター・ボードに入れやすいように縦型にしたというシリーズだ。肝心の音はどうなの? と気になるところを、ここでレポートしていきたいと思う。
まずは、ヴィンテージ・マーシャルであるJTM45のヴォリュームやEQをフル10にしたサウンドをシミュレートしたというディストーション、ボックス・オブ・ロック・ヴァーティカルだ。ディストーション・エフェクターということで、まずはアンプをクリーンにセッティングして弾いてみよう。ボックス・オブ・ロック側のセッティングは、すべて12時の位置で弾くと、ピッキングの強さに反応して歪みが変わるクランチ気味のセッティングになる。弱いピッキングだとアンプのクリーンのまま(やや歪み成分がプラスされている)、強く弾くとクランチ・サウンドが出る。ここから、ドライヴ・ツマミを上げていくと、3時ぐらいの位置からドライヴ感がグッと上がっていくのがわかる。それとともに、6弦あたりの音がブーミーになっていき、まさにヴィンテージ・マーシャルのトーンが再現されている。フルにドライヴを上げても、ちゃんとピッキングの強弱に付いてきてくれるのは変わらず、弱めに弾くとクリーンに近く、ギター側のヴォリュームを絞るとアンプを歪ませていつつもクリーンな“あの”トーンが出せる。このあたりは、アナログならではのニュアンスで、デジタルで作り出される歪みとは一線を画していると言えるだろう。歪み系のエフェクターは、こうでなくっちゃいけない。
また、ヴィンテージ・マーシャルというと、イコライザーを回してもそれほどトーンが変わらないのが特徴だが(笑)、こちらのトーンはけっこう幅が広い。これは、おそらくJTM45の4インプットのどこにインプットするのかをシミュレートしているのではないだろうか。トーンをフルにすると、かなりピーキーなハイを再現してくれるので、たぶん1の上段にインプットしたサウンドに近いのではないか。ブーストというフット・スイッチがあるが、これはソロ時などに音量をいちだん上げたい時に使用するものだろう。
全体的な印象としては、ディストーション・ペダルとのことだが、ヴィンテージ・マーシャルをモデルとしているだけあり、オーバードライブとして捉えることもできる。“これは、たぶんブースターとして使ってもいい感じでは……”と思い、アンプを歪ませてボックス・オブ・ロック側のドライヴを0にして弾いてみると、案の定、極上の歪みが作り出せた。この使い方もおもしろいのではないだろうか。
▲トーン・ツマミの効き幅が広く、アップしていくとじょじょにピーキーなサウンドに変化していく(Box of Rock)
フェンダー・アンプの名機、’59 Bassmanの音を凝縮
’59 Sound Vertical ¥34,000+税
〈仕様〉 ●コントロール:ブースト、ヴォリューム、トーン、ドライヴ、ブースト・スイッチ、ロック・スイッチ ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:66(幅)×51(高さ)×110(奥行き)mm
続いては、フェンダーの’59 Bassmanをシミュレートしたという’59サウンド・ヴァーティカルというディストーションだ。アンプをクリーンにして各ツマミを12時にして弾いてみると……きました! シャリっとしてフェンダーならではの気持ちいいクランチがきます。今回、ハムバッキングのギターで試奏しているのだが、これはシングルコイルのストラトキャスターやテレキャスターで弾けば、なお気持ちのいいトーンが出ることだろう。おもしろいのはトーン・コントロールでこれをフルにしていくとヴォリューム感がアップする。このあたりは、ヴォリューム・コントロールとともに調整していくといいはずだ。ドライヴをフルにしても、ディストーション・ペダルと言うものの、こちらもやはりクランチ〜オーバードライブぐらいの歪みだ。激歪みを望んでいるギタリストには物足りないかもしれないが、このニュアンスの歪みを出してくれるエフェクターのほうが、逆に珍しいと思ってしまうし貴重ではないだろうか。現在ではデジタル・マルチやプラグ・インを含め、Bassmanをシミュレートしたエフェクトはあるものの、ギター側のヴォリュームを絞った時のこのニュアンスまで再現してくれるのは、アナログならではと思えてしまうほど、たまらないトーンを出してくれる。ちなみに、こちらもブースターとして使用してみたのだが、なかなかいい具合にブーストしてくれる。
▲トーン・ツマミを上げていくと、ヴォリューム感もアップするというところがユニークだ(’59 Sound)
名機、ファズファクトリーの名を冠した
ゲルマニウム・ファズとシリコン・ファズ
Silicon Fuzz Factory Vertical ¥34,000+税(左)
Fuzz Factory Vertical ¥30,000+税(右)
〈仕様(共通)〉 ●コントロール:ブースト、ヴォリューム、トーン、ドライヴ、ブースト・スイッチ、ロック・スイッチ ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:66(幅)×51(高さ)×110(奥行き)mm
さて、次に登場するのは、Z.VEXの代名詞となっているファズから2機種の登場だ。まずは、まさにZ.VEXの代表的なエフェクター、ファズファクトリーのファズファクトリー・ヴァーティカル。これこそ、きました! ファズです! 音を破壊してくれます!! まさに、エフェクター!!! 極太なトーンと、粗々しいツブの歪みが襲ってくる。ソロで弾くもよし、バッキングで弾くもよし、どちらも飛び道具として使うには充分すぎる効果を出してくれます。こちらはゲルマニウム・ファズということで、下のほうの記事(“ゲルマニウムとシリコン、それぞれの特徴”)にあるように、ヴィンテージ感満載のロー・ミッドがド〜ンと出てくれるファズ・トーンを作り出してくれた。驚くことに、ゲートが付いていて、ファズならではのノイズをカットすることも可能なのがおもしろい。ノイズを楽しむもカットすることも可能なのはうれしいところだ。そして、コンプ・ツマミは、右に回していくほどに音を潰してくれる。スタブ(スタビライザー)・ツマミは……なんだろう!? 右に回すほどファズならではの音になるが、2時より左は意味がない!? ここは思い切って、フルで使うことこそ、このモデルの意味があるのでは? と思わせてしまうツマミだ。かなり極悪に歪んでくれるように書いているが、単音を弾くと意外にも(!?)、上品なファズのニオイも感じさせてくれる。上品なファズ? 弾いてみればわかります(笑)。
▲スタビライザー・コントロールはフルが基本とのこと。そこから絞っていって、好みの潰れ具合を探っていこう(Fuzz Factory)
もう1機種のファズは、シリコン・トランジスタを使ったシリコン・ファズファクトリー・ヴァーティカルだ。失礼しました、先ほど上品なファズと言ったのは訂正いたします。上品といえば、こちらのモデルのほうが上品なトーンを出してくれる。歪み的には、たしかにファズなのだが、ディストーション寄りの歪みを持ったファズとはいえ、ミッドにまろやかな部分を持ちつつハイも出ているトーンだ。しかし、小音量で弾いてもハウるハウる! というか、ノイズなのかな? しかし、心配ご無用。基本的なコントローラー類はファズファクトリーと同じで、こちらにもゲートが付いているので、ノイズやハウリングを見事にカットしてくれる。スタブ・ツマミを動かしている時の音もおもしろく、この音までも飛び道具として使えるんじゃないかと思える壊れたサウンドを出してくれる。歪みのツブがゲルマニウム・ファズよりも細かめに感じるので、たしかにモダンなトーンといえばモダンな方向だ。どちらのファズがいい悪いというよりも、好みの問題で選べばいいのだろうが、どちらかというと悪いほうがファズっぽくておもしろいのではないだろうか(笑)。悪いのはどっちって? う〜ん、一匹狼のワルがゲルマニウム、不良にも慕われるワルがシリコンという感じか!?
▲ノイズを含めてファズファクトリーの味なのだが、このゲイトでノイズをカットすることも可能だ(Silicon Fuzz Factory)
■ゲルマニウムとシリコン、それぞれの特徴■
ファズの紹介記事を見ていると、“ゲルマニウム・トランジスタを使用”、あるいは“シリコン・トランジスタを使用”という文章に触れることが多いと思う。ファズ・サウンドの核、心臓部ともいえるのが、このトランジスタなのだが、それぞれに特徴がある。
まず、ゲルマニウム・トランジスタだが、ファズの名機と呼ばれるファズ・フェイスの初期モデルなどに搭載されていたもの。温度や湿度によって、サウンドが変化するという弱点があるが、ロー・ミッドにポイントがある、どこかヴィンテージを感じさせるサウンドに惚れているギタリストも多い。そのため、現代でも、あえてゲルマニウムを採用しているファズも販売されている。そして、温度や湿度の問題をクリアしたのがシリコン・トランジスタだ。扱いやすさでは、シリコン・トランジスタを搭載したファズに軍配が上がる。サウンドの傾向はハイ・ミッド寄りで、ファズの中でもややモダンな傾向にある。ファズを選ぶ際の参考にしてほしい。
■Z.VEXの代名詞と言えるファズファクトリー■
ファズに詳しくないギタリストでも、一度はその名を聞いたことがあるだろうと言われるのがファズファクトリー。Z.VEXの代表者であるザッカリー・ヴェックス氏が90年代半ばに発表したファズファクトリー。ファズ・フェイスを製作しようとしての失敗作だったとのことだが、いい意味でノイジーで過激なサウンド、そしてユニークなデザインは注目を集め、ジョン・フルシアンテをはじめ、多くのプロ・ギタリストも愛用することとなった。その後、幾度かデザインの変更や上位機種、兄弟機種の発売などもありつつ、現在もZ.VEXの代表機種として、そしてファズの定番モデルとして人気を集めているのだ。
Z.VEXのこだわりを感じさせる、
個性派ヴィブラート/フェイザー
Vibrophase ¥43,000+税
〈仕様〉 ●コントロール:スピード、ヴィブラート/フェイズ、フィード・バック、ハイ・バイアス、ロー・リミット ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:66(幅)×51(高さ)×110(奥行き)mm
最後に紹介するのは、歪み系のモデルではなくヴィブラート/フェイザー・エフェクターのヴァイブロフェイズ。これまたアナログらしいかかりをしてくれるモジュレーション・エフェクターとなっている。カテゴリーとしては、ヴィブラート/フェイザーとあるが、コーラス的なかけ方も充分に可能で、ヴィブラート/フェイズ・ツマミの位置で、そのエフェクト具合が変化する。このため、フェイザーとヴィブラートのいいところ取りという使い方も可能なのだ。ロー・リミットというツマミは、低域を調整すると思いきや、回してみるとエフェクトそのもののかかり方が変わってくれるニュアンスだと感じた。ハイ・バイアスは、高域部分のトーンを調整するツマミだろうか。全体的に、とにかく暖かいトーンでかかってくれるので、ヴィンテージ・テイストあふれるフェイザーやヴィブラート・エフェクトならではの音が作り出せるのがうれしい。
Z.VEXは、どのモデルもアナログならではのトーンが魅力だ!
▲左に回すとヴィブラート、右に回すとフェイザー的な効果となり、中央だとそのミックス的な効果が得られる(Vibrophase)
■カラフルでヴィヴィッドなZ.VEXのラインナップ■
今回試奏紹介した5機種の他に、Z.VEXからは50種類ほどのペダルが発売されている。ここでは、その中からWeROCK読者にオススメの6台を厳選して紹介しよう。
Fuzz Factory 7 ¥85,000+税
▲ファズファクトリーの最上位機種にあたるペダル。オン/オフが切り替えられるトーン・コントロールや9ポジションのロータリー・スイッチであるファット・コントロールなどを備えている。また、かなり貴重なNOSゲルマニウム・トランジスタを搭載し、豊かな中域を持った荒々しいファズ・サウンドが得られる。
Channel 2 ¥17,000+税
▲+24dBのゲイン・アップが可能なブースター。アンプの歪みのキャラクターを活かしつつ、厚みを与えることができるペダルだ。
Fuzzolo ¥20,000+税
▲シリコン・トランジスタを採用した、モダンなファズが得られるペダル。コントロールはヴォリュームとPW(Pulse Width)のみだが、このPWでファズの波形を調整できる。また、本体内部のジャンパーで、アクティヴ・ピックアップやベースでの使用にも対応できる。
Fuzz Factory Vexter ¥26,000+税
▲ハンド・ペイントではなく印刷にすることで価格を抑えたヴェクスター・シリーズ。このシリーズにもファズファクトリーがラインナップしている。
Super Hard On Vexter ¥22,000+税
▲サウンド・クオリティはそのままにコスト・ダウンを実現したヴェクスター・シリーズからもう1台。こちらはブースターで、とくにハムバッキング・ピックアップ搭載のギターやクラシック・アンプなどに向いている。
Double Rock Vexter ¥35,000+税
▲オルタナ界を代表するバンド、ダイナソーJr.のJ・マスシスが愛用するダブル・ロック。80ページで紹介しているボックス・オブ・ロックの回路2台分を1台にまとめてほしいという彼のリクエストから生まれたモデルで、そのヴェクスター・シリーズ版となる。ディストーション・モードとブースター・モードを切り替え可能。
問:株式会社プロサウンドコミュニケーションズジャパン
http://www.pci-jpn.com/