シンプルかつ音にこだわったスイッチャー
昨今、さまざまなスイッチング・システムが発売されているが、便利になるにつれて複雑で操作性が難しいモデルも多くなってきた。そんななか、ケーブル・メーカーであるバイタル・オーディオから、シンプルで使いやすいスイッチャーであるENCOUNTER/VAPS-4が登場! シンプルだからこそ、考えられた機能を満載しているこのモデルに迫ってみた。価格もお手頃だ!!
※WeROCK 065の掲載記事より。
メーカーに聞く、エンカウンターの魅力
まずは、メーカーのご担当者にエンカウンターの魅力を聞いてみた。バイタル・オーディオ自体、もともとケーブルがメインのブランドなのだが、なぜスイッチング・システムを開発したのだろう?
「もともとバイタルはスタジオやエフェクター・システムを構築するための高品質なケーブルを作ることからスタートしました。ブランドとして上質なシステム構築を行なうことを主眼に置いて製品開発を行ない、その流れからケーブルに続いてシステムを構築するうえで必要なパワー・サプライ、そしてこのたびスイッチング・システムとしてVAPS-4を開発にするにいたりました」(メーカー談)。
エンカウンターは、多くのループを搭載しているわけではなく、シンプルに4ループ。このあたりのこだわりは?
「日本の事情的に、あまり大きいボードというよりも小さいボードのほうが使用する方が多いかなと思ったんです。それならば、まずはコンパクトなモデルからスタートしようと。そして、作るうえでもシンプルな操作感ということを考えて企画したのがエンカウンターです。さらに、パワー・サプライがヒットしているので、それをビルト・インしてみようとなりました」。
パワー・サプライというと、最近ではデジタルとアナログ・エフェクターの混合によりノイズの問題が悩ましいところだが……。
「もともとのPOWER CARRIERが、アイソレート……すなわちそれぞれの電源で分離して供給するパワー・サプライだったので、ノイズ面で苦労したということはなかったです。ただ、4ループ+チューナーのぶんを考えると、最低でも5個の電源を供給したいなというのがあったので、そのあたりは考えました。5ポートありますが、さらに同梱の分配用分岐ケーブルを使用することで、1ポートを3 口分に分けて電源を供給することもできます」。
エンカウンターの魅力は、とにかくシンプルなところだろう。ここにも、こだわりがあるようだ。
「シンプルで操作しやすいことを考えてMIDIなどは排除しました。で、エディットの方法も、説明書がなくても簡単にできるぐらいシンプルにしてしまおうという方向性で開発しました」。
5バンク×4プリセットだが、選ばれているプリセットを踏むとバイパスになる。これならアンプ直の音をメインにするギタリストには便利。かなり使い勝手がいいモデルと言えそうだ。
▲スイッチの間隔は、このとおり。大きめのスポーツ・シューズで、隣同士がちょうど当たらないぐらいだ。さらに、もし2つ同時に踏んでしまっても反応しないように設定されている
ケーブルにもこだわる
エンカウンターを使用してボードを組む際にオススメのパッチ・ケーブルが、バイタル・オーディオのVA-PATCH-Fだ。これは、バイタル・オーディオの現行ラインナップの中では、もっともスリムながらも音質を落とさないためのくふうを施した新シリーズ。4406 OFCというケーブルを採用し、直径5.0mmというスリムさなので、柔軟性と取り回しのしやすさが抜群なモデルとなっている。
線が細いと、音質が落ちるんじゃない? と思われる方もいるだろうが、そこはケーブル・メーカーだ。ケーブル内部の構造をこれまでとは異なる開発をし、インピーダンス特性と信号の流れを安定させているそうだ。外皮にも新素材(難燃PE)を採用して、柔らかく軽量化にも成功。音質の低下を防ぐだけでなく、よりパワフルで引き締まったサウンドを生み出せるとのこと。
なによりも、プラグ部分の赤いフィニッシュが魅力的で、下のボードを組んだ時の鮮やかさだけでも、このパッチ・ケーブルを使いたいと思うギタリストも多いだろう。
▲VA-PATCH-F。プラグの種類や、ケーブルの長さも数種類用意されており、値段は¥2,700(+税)より
ボードを組んでみると〜エンカウンターの使い心地&サウンドは?
じっさいに、エンカウンターを使用して組まれたボードをメーカーにお借りしてきた! 小型ボードなのだが、ご覧の通り、チューナーも入れると合計8台のエフェクターを装備している。4ループに8台? と思いきや、1ループ目や2ループ目に2台のエフェクターを接続し、プリセットとエフェクター単体でのオン/オフも可能にしたスペシャルなボードとなっている。こんな使い方もできるんだな〜と目からウロコでした。
まず、エンカウンターのプリセット方法だが、じつに簡単に行なえる。まずはプリセットする場所をバンク・スイッチとPGMスイッチで選択する。続いてエディット・ボタンを押す。あとは、使用するエフェクターが接続されているループ番号のスイッチを押して、ストア・ボタンを押すだけで終了! ものの1分もかからずにプリセットできるなんて、スイッチャーとしては画期的なシステムだ。ちなみに、エディット・ボタンを押している時はダイレクト・モードになるので、ループに接続されているエフェクターのオン/オフのみも行なえる。エフェクターを直列で接続するよりも音質の劣化が少ないので、プリセットを使用しなくてもオススメな使用法だ。試しに、直列にエフェクターを接続した時と音を比べてみると、明らかに違うことがわかる。
そして、魅力的なのが、エンカウンター自体にパワー・サプライが搭載されていることだろう。これにより、ボードを組む際にパワー・サプライのスペースがいらなくなるわけで、かなりコンパクトに組めるのだ。
シンプルで使いやくコンパクト。エンカウンターは、ギタリストだけでなくベーシストにもオススメのスイッチング・システムと言えるだろう。
プリセットも簡単に行なえる
▲プリセットは簡単。エディット・ボタンを押すと、プリセット・モードか各エフェクターのオン/オフが選択できる
▲ループに接続されているエフェクターを選択してストア・ボタンを押せばプリセット終了。選択されたエフェクターは、上部の緑色のLEDで認識できるようになっている
VITAL AUDIO ENCOUNTER/VAPS-4 ¥22,000+税
〈仕様〉 ●4 ループ・プログラマブル・スイッチャー ●4 パッチ x 5 バンク=合計20 プリセット可能 ●プログラムスイッチ×4 ●バンク・アップ・スイッチ×1 ●チューナー/ミュート・スイッチ×1 ●チューナー・アウト ●パワー・サプライ(POWER CARRIER)内蔵 ●POWER CARRIER部(9v 100mA×2/9v 300mA×2 /9v 500mA x 1) ●ACアダプター:12v / 2000mA、 専用アダプター付属 ●極性:センター・マイナス仕様 ●外形寸法:336(幅)×76(奥行き)× 46(高さ)mm ●重量:696g
▲サイズ感は、WeROCKと比べると、このとおり。4ループのスイッチャーで、使いやすいサイズだ
▲ミュート/チューナー・アウトも装備されている!
ボード内の気になるエフェクターにも注目!!
今回紹介しているボードに気になる新製品が搭載されている。ここでは、なかでも気になる2機種の試奏レポートをお送りしよう。
まずは、いちばん右に搭載されているワウだ。これは、モーリーの新製品でキコ・ルーレイロのシグネイチャー・モデルだが、小型なのでボードを組むにはうれしいワウだ。モーリーの特徴である光学式センサーによるスイッチレスなワウで、ペダルを踏み込むことでエフェクトがオンになるモデル。かかり方もエグくていい。
そして、もう1台が、カール・マーチンのオーバードライブ。こちらは、レギュラーとファットという2種類のモードを切り替えられるオーバードライブで、かなり高域のヌケがよく、音にキラビヤカなツヤを与えてくれるモデルだ。ファットにすると低域が盛り上がって、モダンになる。
▲モーリー: MINI KIKO LOUREIRO SWITCHLESS WAH(数量限定/オープンプライス=実勢価格¥25,000+税)
▲カール・マーチン:DC Drive(¥13,800+税)
問:株式会社フックアップ
https://hookup.co.jp