清水昭男が驚愕サイズのアンプ・シミュレーターを試奏!
アンプや歪み系エフェクターをキャプチャーした音色を手軽に再現するという新しい発想でシミュレーター界に革命を起こしているTONEX。
そのTONEXに、極小サイズのTONEX ONEが加わった。すでにTONEXを愛用しているというアンセムの清水昭男に、最新モデルを試奏してもらった!
清水昭男による試奏動画
IK Multimedia
TONEX ONE
¥33,000(税込)
——先日のライヴ時の機材を見ると、ボード内にTONEX PEDALが入っていましたよね?
清水:昔はデジタル系も使用していたんですが、しばらくアナログのみで音作りをしていたんですね。でも、最近、デジタルものへの抵抗感もなくなってきて、自分でエフェクト・ボードを作ったりする時に、とにかくコンパクトにしたいと思ってたんです。それで、いろいろ調べてたらTONEX PEDALにたどり着いて、去年の6月ぐらいから使ってますね。
最初は、DAWとかPC上でTONEXソフトウェアを使ってたので、おもしろいし便利だなって感じてました。で、海外ツアーとかの話もあったので、となるとフェスとかだとリハーサルがないとかもあるので、エフェクト・ボードを持って行って4ケーブル・メソッズとか複雑なセッティングをするのは大変じゃないですか? そこでアンプのリターンに直で接続できるようなシンプルなセッティングができないかと思い、TONEX PEDALを導入しました。TONEX PEDALにToneNETでダウンロードした音や自分のペダルをキャプチャーしたものを入れて使っていて、かなり使えたんですよ。
——TONEXソフトウェアを使っていたということは、かなり概要は把握していたんですね?
清水:そうです。自分でTONEX MAXも購入したし、AmpliTubeも買ってますから、かなりIKマルチメディアさんには貢献してます(笑)。
——TONEX PEDALを導入して、最初はプリアンプとして使用していた?
清水:自分のアンプが使える時はTONEX PEDALをアンプとして使うという発想がなかったので、TONEX PEDALに歪み系エフェクトを入れて使ってました。もちろん、自分のアンプがない時はプリアンプとしても使えるようにセッティングはしてましたけど、その方法ではまだ使う機会がないですね。とにかくいろんな現場で対応できるように導入しておいた感じです。
——実際に、前回のツアーでTONEX PEDALを歪み系エフェクトとして使っていたということは、プロフェッショナルな現場でも対応できたと。
清水:自分で弾いてるので本物との違いはわかりますけど、ブラインド・テストしたらわからないレベルの音ですよ。
——意外だったのが、TONEX PEDALに転送している歪み系ペダルが、チューブ・スクリーマー系ではなくベリンガー VT999のキャプチャーだったという。
清水:真空管が入ったモデルなんですが、マニアックな人がToneNETに上げていたんです(笑)。自分のアンプが使える時のプリセットと、他のアンプ用のプリセットと、どんな現場でも対応できるようにプリセットを入れてました。前回のツアーでは、そのべリンガーの歪みを入れたTONEX PEDALとマーシャル JCM2000のチャンネルA(クランチ・セッティング)を使ってメインの音を作ってました。あと、クリーン・トーンの時は、TONEX PEDALをプリアンプとして使ってましたね。
その前から、リハーサル・スタジオとかではいろいろ実験していましたし、プリアンプとしてもちゃんとゲイン・レベルを調整すれば使える音が作れるし、できることは無限にあります。——そして、今回、TONEX ONEが発売されました。第一印象は、どうでしょう?
清水:こんな小さいのに、音的にTONEX PEDALと同様なんて驚きですよ。リハーサルとかだったら、これだけ持ってけばなんとかなりますよね。残念ながら、TONEX PEDALは“このアンプに、こっちの歪みエフェクターの音を足したい”となってもプリセットの重ね掛けができないんですよね。そうするには、2台3台と用意しなくてはいけなかったじゃないですか。となると、大きかったので手軽とは言えなかった。
ところが、TONEX ONEなら2〜3台あっても大丈夫ですよね。例えば、プリアンプとしていい感じのマーシャルの音を見つけたと。でも、その音はクランチ系の歪みなので、これまた好きな歪み系エフェクターを加えたいとなると、TONEX ONEが2台あればいいわけですよ。あるいは、もともとTONEX PEDALを持ってるならTONEX ONEを足すのもありですね。そうすると、数種類の音色を足元で操作できるようになりますし、そんなにたくさんの音色を使わないならTONEX ONEを2台とかで充分です。ぱっと今、思いつくだけでも、いろいろな使い方が浮かんできます。
これと、マルチ・エフェクターがあったら完結するし、TONEX ONEのリバーブも気に入ったので、A/Bモードにして、AでバッキングBでソロとかに設定すれば、これ1台でも充分にいけますね。“シンプルにいかないと”という現場の時は、かなり可能性がありますよ。2台以上あると使い勝手は、かなりいいですし。
——かなり小型ということで、操作性はどうですか?
清水:これはしょうがないと思うんですが……この小さい中に、ツマミが4つだけなので、それなりに覚えないといけないことは多いかもですね(笑)。でも、ちょっと教えてもらっただけでわかりやすかったです。TONEX ONEで細かくギターのインプット・ゲインを調整するとかは、あまり頻繁にはやらないと思うんですよね。
基本的に細かい設定はTONEXソフトウェアのほうで完璧に仕込んで、それをTONEX ONEに転送して現場に持っていくと思うんです。ひとつデメリットがあるとしたら、ソフトウェアがないといろいろな発展性は難しいと思うところですね。それがメリットでもありデメリットでもあるかな。まあ、TONEX ONEだけって人もいないと思うし、もともとTONEX SE(ソフトウェア)がバンドルされてるわけだから、TONEX SEのホーム画面で音を作り込んで、気に入った音をTONEX ONEに転送するっていう使い方がベストですよね。で、僕的な感想ですが、TONEX ONE(TONEX)に付いているEQ類は、本来のアンプの帯域を再現しているというわけではないので、あまり大幅に変更しないほうが音がいいと感じています。センターの位置の音が、いちばん“なるほど”となるトーンで、いちばん重要なのはインプット・ゲインの調整かと思いますね。
——自宅のPCで、TONEXソフトウェアで見つけた音と、それをTONEX ONEに転送して鳴らすのとで、どれぐらいの差を感じました?
清水:TONEX ONEではアンプにつなげて鳴らしてないので、まだわからないですけど、TONEX PEDALの時は、かなりインプット・ゲインが上がった印象でした。そこを調整するのがポイントなのと、もしアンプのリターンに接続して使うなら選択するトーン・モデルもキャビネットのシミュレートがない音がオススメです。プリアンプだけのトーン・モデルを選ぶのがいいんですよ。TONEX ONE内でキャビネット・シミュレートのオン/オフができるけど、やっぱり飽和した音になってしまうので、最初からキャビネットを通ってないトーン・モデルを選ぶのがいいかと思います。パワー・アンプについても、そのあたりがちゃんと再現されるので、アンプのリターンに挿して使う場合は、できればプリアンプだけのものを選択するといいですね。ToneNETではそのあたりをわかってる人がいて、プリアンプだけの音とパワー・アンプとキャビネットを通った音を分けてアップロードしてる人もいるんですよ。
——総評としては、いかがでしょう!?
清水:チューナーも付いてるし、かなり優秀で、いい印象ですね。1台あっても充分だし……でも2台欲しいです(笑)。ただ持ち運びを考えると、せっかくだから1個でやりたいかな(笑)。TONEX PEDALを拡張するっていう考え方もありだし、ちなみにアコースティック・ギター用のプリアンプとIRみたいなものをキャプチャーしてる人もいるんですね。それも、けっこういいんですよ。それを使えば、アコースティックでも使えますね。
■9色に変更可能なLEDノブ
▲コントロール・ノブは、9色に変更可能なLEDが組み込まれている。
たとえば、歪みは赤でクリーンはクリアな色、チューブ・スクリーマーならグリーンなど自由に配色できる
■チューナーも搭載
▲フットスイッチを長押しすることでチューナー・モードが起動する。
音階は表示されないものの、3つのツマミがデジタル・チューナーのようにグラデーションで表示され、センターのツマミが緑に表示されればチューニングOKだ
■20種類のプリセットを保存可能
▲本体には、合計20種類のプリセットを保存しておくことができる。
フットスイッチをA/Bモードに設定すれば、その中から2種類のプリセットを切り替えることが可能だ
■ノイズ・ゲート、コンプ、リバーブも搭載
▲ALTボタンを押すと、上部にある3つのツマミが、ノイズ・ゲート、コンプレッサー、リバーブ・コントローラーに変更される。リバーブは、ホール、ルーム、プレート、スプリング・リバーブ x 2の合計5種類搭載されているという贅沢さだ
■ヘッドフォンを接続可能
▲アウトプットは、モノラル出力だけではなくステレオ出力にも対応。さらにヘッドフォンを接続することもできるので、アンプの音で練習することもできる
■好きな音はTONEXソフトウェアから転送する
TONEX ONEから好きなサウンドを出すには、PCに接続し、TONEXソフトウェアから転送すればOKだ。
その他にも、自分でキャプチャーしたり、トーン・コレクションというクリエイターによるコレクションを購入し転送することも可能。くわしくは下記で解説しているが、基本的にPCに接続してTONEXソフトウェアとリンクさせることからスタートさせる。
TONEX ONEを購入すると、ソフトウェアであるTONEX SEが同梱されており、スタンド・アローンで使用できるので、そのままトーン・モデルを使っての演奏、さらにはキャプチャー、TONEX ONE へのプリセットの転送・管理などが行なえる。DAWのプラグインとしても使えるので、かなり幅広い使い方ができるぞ。
■音の取り込み方法
①PCに接続してデフォルトの音を取り込む
TONEX ONEに音を取り込む基本となるのは、上記で紹介しているTONEXソフトウェアを使用することだ。
接続&同期方法は、TONEX ONEとPCをUSB接続→TONEXソフトウェアと同期→好きなトーン・モデル(付属のSEヴァージョンはデフォルトで200種類表示される)を選択→TONEX ONEに転送。これでTONEX ONE内にトーン・モデルが取り込まれ、選択したトーンを奏でることができる。
②ToneNETに接続して、世界のユーザーの音を取り込む
TONEXソフトウェアのデフォルトで収録されているトーン・モデルの他、TONEXソフトウェアの右上にあるToneNETをクリックすると、世界中のユーザーがアップロードしたトーン・モデルが表示される。気に入ったモデリングを見つけてダウンロードし、それをTONEX ONEに転送することも可能。毎日のように更新されるので、その数は無限大。今回の試奏でも、好きな音を見つけるだけで時間が過ぎてしまった。
③トーン・コレクションで購入する
さらに、これまたギタリストならたまらないのが、“トーン・コレクション”だろう。これはトーン・クリエイターが作り上げたトーン・モデルで、有料にはなるが、現在では購入不可能な名機がラインナップされている。
ビート・クラウド(https://beatcloud.jp)では、『TONEX Metal Gems Signature Collection』の他、メサ・ブギーのレクチファイヤーを含む5種のモデルをキャプチャーした『TONEX MESA/Boogie Reference』、さらには4種のダンブル・アンプ、ケンタウルスのオーバードライブ、1981製アイバニーズ TS808 をベースにした20種のトーン・モデルを収録した『TONEX ODS Legends』が発売されている。
▲トーン・コレクションのひとつであるTONEX Metal Gems Signature Collection。
ピーヴィー 5150、ディーゼル・ハーバート、ソルダーノ SLO-100、ボグナー ÜberschaⅡと、4種の伝説的なアンプをキャプチャーした100種類のトーン・モデルが収録されている
④自分でキャプチャーする
少々、ハードルは上がるが、自分のアンプや愛用している歪み系エフェクターを自らキャプチャーすることも可能だ。
キャプチャー可能な音は、上記の5種類が基本となる。
A=アンプ+キャビネット、B=歪み(or ブースター)系やイコライザーなどのエフェクターを接続したアンプ+キャビネット、C=歪み(or ブースター)系エフェクター、D=アンプのみ、E=エフェクター+アンプ・ヘッド。
キャビネットからの音をキャプチャーするにはマイク、ヘッドからの音をキャプチャーするにはロード・ボックスが必要になる。なお、ロード・ボックス機能などキャプチャーに便利な機能を兼ね備えた機材が、TONEX Captureだ。
▲自分の好きなアンプや歪み系エフェクターの音を取り込むのに便利なTONEX Capture(¥44,000/税込)
▲TONEXソフトウェアでの、キャプチャー画面
■本物のエフェクター vs TONEX ONE
今回は、こんな実験もしてみた。写真左は、TONEX ONEにアンプ(JCM-2000のチャンネルAのトーン・モデル)を取り込み、アイバニーズのチューブ・スクリーマー・ミニを接続して鳴らしたパターン。写真右は、TONEX ONEを2台使用し、1台のTONEX ONEがアンプ、もう1台が清水愛用の歪み系のエフェクトをみずからキャプチャーしたTONEX ONEになっている。
清水:PCモニターでの試奏だったので、その環境での感想なんですけど、充分に僕が本物で出してる音に近いですね。で、好みで言ったらTONEX ONE2台(写真右)のほうが好きかな(笑)。TONEX ONE+本物オーバードライブのほうが歪みがハイファイというか強めに感じました。もちろん、TONEX ONEにキャプチャーしたエフェクト(写真右)は自分の実機なので、ほぼ歪ませてないというセッティングになっていて、それが好みなのでね。音が潰れずに、倍音感が増してくれます。
■TONEX ONEとTONEX PEDALの比較
■TONEX ONEの詳細■
https://hookup.co.jp/products/ik-multimedia/tonex-one
■TONEX PEDALの詳細■
https://hookup.co.jp/products/ik-multimedia/tonex-pedal
『CRIMSON & JET BLACK』
ワードレコーズ
GQCS-91280 3,300円(税込)
◎オリジナル・アルバムとしては約6年ぶりとなる(2023年4月リリース)、アンセムの最新作。初期を思わせるストレートな楽曲には、ヘヴィ・メタルに対するこだわりが随所に垣間見られる。敏腕エンジニアであるイェンス・ボグレンがミックスを担当し、さらにメタリックな仕上がりになっている。
また、アンセムは10月26日よりライヴ・ハウス・ツアー“Live Circus vol. 5”を行なう。日程は以下の通りだ。
10月26日(土)=神戸ヴァリット
10月27日(日)=岡山ペパーランド
11月2日(土)=熊谷ヘヴンズロック
11月3日(日)=長野J
11月9日(土)=豊橋KNOT
11月10日(土)=静岡サナッシュ
11月16日(土)=郡山#9
11月23日(土) & 24日(日)=新横浜ニュー・サイドビーチ
12月7日(土)=金沢ゴールドクリーク
■アンセム 公式サイト■
http://www.heavymetalanthem.com/