パワー・サプライにこだわれ!!〜その1

近年は、さまざまなタイプのパワー・サプライが登場している。エフェクト・ボードを組むギタリスト/ベーシストも多くなっているので、その性能や音質への影響も気になるところだ。
そこで、今回はパワー・サプライの中でも注目のメーカーを取り上げてみた。まずは、ヴァイタル・オーディオの伊藤氏に登場していただき、現代のパワー・サプライ事情を聞いてみた。
※WeROCK 075の掲載記事を2回に分けて公開します。
その2はこちら。

 

——パワー・サプライは、数十年前には今ほど種類も多くなく、“電池のほうが音がいい”などの噂もあったり、それほど重要視されているわけではなかったと思うんですね。それが、ここ数年、いろいろな機種が出てきて、目覚ましい進化も遂げているようですが?
伊藤:電源まわりはエフェクターのノイズの要因になることが多々あって、電池を使えばクリーンに出てくれるんですが、もちろん消耗するので交換しなくてはいけなかったりと手間がかかってしまいますよね。かといってエフェクター1台1台にアダプターを接続するのも大変だし、コンセントの場所によってはノイズを拾ってしまうんです。
開発の際は、まずそういった部分の影響を少なくすることがポイントになります。たとえば、当社の製品でいえばフラッグシップになっているVA-08 Mk-
は、全部のポートがアイソレートされていて、アダプター接続で発生していたノイズが消えたという評判をいただいております。やはり、クリーンに電源を供給するという部分が、いちばんのポイントになりますね。
——ここ数年、そのアイソレートという言葉がふつうに使われるようになっていますが、具体的にどういう技術なのですか?
伊藤:要は、出力する電源をひとつずつ隔離しているということになります。通常だとアダプターから入ってきた電流を上流から下流に流しているだけなんですが、アイソレートするということは上流から入ってきた電流をトランスや基盤を介して、各ポートに分配して出す仕様になってます。ひとつひとつに電源を供給することでノイズ対策を取るということです。なかなか言葉で伝えるのは難しいんですが(笑)。
——ふつうに分配して供給するだけだとノイズを拾いやすくなるところを、パワー・サプライの構造でうまい具合に分配させてる、みたいな状態ですね?
伊藤:簡単に言ってしまうと、そうですね。昔からアイソレートという仕様はあったと思うんですが、それを行なうためにはパーツのコストが上がって高価なものになってしまうとか、筐体が大きくなるなどの問題が出てくるんです。最近は技術も進歩して、小さなスペースの中でアイソレートの基盤が作れるようになってコストも下げられ、筐体自体も小さくなってきました。
——デジタルとアナログのエフェクターを混在させるとノイズが出やすくなると言いますよね?
伊藤:そうですね。デジタルとアナログが混在することでノイズが出ることがあります。アイソレートされていない電源だとその影響を受けやすくなるんです。さらに消費電量が大きいデジタル・エフェクターを使用すると供給電量が足りず、ノイズが乗る原因となります。アイソレートされていることはもちろんですが、デジタルに対応するにはひとつひとつの容量の問題も出てきます。
——ノイズの次は、出力する容量の問題ですか。
伊藤:出力容量を大きくしようとすると、また筐体が大きくなってしまう問題も出てきます。各社、いろいろと考えながら開発されてると思います。
——単純に筐体を大きくしたほうが、開発はしやすいのですか?
伊藤:基盤に余裕を持って作れますからね。ところが、最近はみなさん、エフェクト・ボードに数多くのエフェクターを入れてるじゃないですか。空いてるスペースは、少しでもエフェクターに確保したいと思うんです(笑)。そういった部分を考えると、サイズにも限界があるのかなと思います。
また、小型化することによって、今度は発熱の問題が出てくるんですね。小さくすれば熱もこもりやすくなるので、排熱にも気をつかわないといけなくなります。供給する容量が多くなれば、どうしても基盤自体も発熱してしまうので逃れようのない部分なんですが、そこもできるだけ発熱しないように考えて開発しています。
——80年代までさかのぼると、エフェクターのラックを組むギタリストが多かったじゃないですか。ところが、最近はラックを使うギタリストも少なくなり、変わってボードを組むギタリストが多くなってると思うんです。となるとパワー・サプライの必要性も増してきますよね。
伊藤:かなり需要があると思います。だからこそ、“どのパワー・サプライがいい!”みたいな論議が尽きないジャンルなのかなと思ってます。メインのエフェクターではないんですが、それこそデザインの部分まで重視していて、ペダル・エフェクターみたいな感じで選ばれているところもあるようです。ヴィジュアルまで注目されるような時代ですよね。音には関係ないんですが(笑)、SNS映えというかエフェクト・ボードの写真をアップするギタリストも多いのも理由だと思います。
——ヴァイタル・オーディオのパワー・サプライは、デザイン的にも洗練されていますよね。
伊藤:ヴァイタル・オーディオのイメージ・カラーとして赤というのがあったので、それを筐体に使ってみようというのが始まりでした。パワー・サプライといえば黒一色とかシルヴァー一色というのが多かった中に、こういうモデルが出てきて、だんだん見た目も重要視されるようになってきたのかな、とは思ってます。
——じっさいに、パワー・サプライ自体でノイズが発生する割合というのはどれぐらいなんでしょうか? それこそ、ギター本体だったり、アンプだったり、ノイズ発生源はいっぱいあるじゃないですか?
伊藤:そうなんです(笑)。ただ、言えるのは、複数のペダル・エフェクターを使うようになると、そのひとつひとつにノイズの原因は出てくると思うので、安心感を含めてアイソレート対応しているパワー・サプライを使うのがいいと思います。当社のモデルを使用しているユーザーさんからは入れ替えたらクリアになったという意見をいただいてるので、多かれ少なかれやはり影響していると思います。もちろん、どこでノイズを拾うのかを追求しだしたらキリがないんですけど、やはり安心を買っていただきたいという思いもありますし、デザインを含めてパワー・キャリアーを愛用していただけるみなさまが多いですね。

▲パワー・キャリアの全モデルを並べてみた。
本誌(A4サイズ)に収まるということからも、かなり小型というのがわかる


VITAL AUDIO
小型化し、デザインにまでこだわった5台の高性能モデル

POWER CARRIER VA-08 Mk-Ⅱ
¥13,500+税

仕様〉
●インプット:DC12V、2,000mA
●アウトプット: 9v →500mA(最大)×6、9v/12v/18v→ 800mA(最大)×2
●外形寸法:140(幅)×32(高さ)×70(奥行き)㎜
●重量:238g
●付属品:AC/DC アダプター×1、DCケーブル(60cm ストレート
/L型)×8、電圧昇圧用Yケーブル(プラグタイプ:ストレート/ストレート×2)、電流分配用Yケーブル(プラグタイプ:ストレート/L型×2)、ユーザー・マニュアル

ヴァイタル・オーディオのフラッグシップ・モデル。
アイソレートされた8ポートの使用が可能で、同梱されている分配用Yケーブルを使用すれば、同じ電圧で2つに分配することもできる(合計電流は、出力ポート本来の合計になる)。また、ヴォルテージ昇圧用 Yケーブルが付属しており、これにより、Aポート+Bポートで最大36v、Aまたは Bポート+ 9vポートで最大27vまでという高い電圧の供給も実現している。こういった裏技は、アイソレートしたパワー・サプライだからこそできる仕様だ。さらに、各ポートにLEDがあり、アイソレートされているとひとつのポートにトラブルがあっても他のポートは動作するようになっており、不具合が出たポートはレッドに点灯する(通常はグリーン)。

▲スイッチで、9v、12v、18vに変えられる

■POWER CARRIER VA-08 Mk-Ⅱが通販で購入可能■
○イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/501994

○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/vtlaud-va-08-mk2


POWER CARRIER VA-R8
¥13,500+税

仕様〉
●インプット:DC12V、2,000mA
●アウトプット: 9v →500mA(最大)×2、9v→ 300mA(最大)×6
●外形寸法:140(幅)×32(高さ)×70(奥行き)㎜
●重量:238g
●付属品:12V 2A ACアダプター付属、DCケーブル(
60cm ストレート/L型)× ×8、電圧昇圧用Yケーブル(プラグタイプ:ストレート/ストレート×2)※昇圧用Yケーブルを使用することでさらに高い電圧のエフェクターも同時に使用可能、USB出力用ケーブル(30cm USB-A/Micro USB)

アダプターを接続しなくても使用可能という画期的な充電式パワー・サプライだ。
外部電源を使用しないことにより、さらにノイズ対策に特化したモデルともいえる。野外や路上ライヴなど電源がないところでもエフェクターが使えるので、かなり便利なパワー・サプライで、ステージによっては電圧が安定しない場所などもあり、そういう時にも電源の影響を受けずにエフェクターを安定して使用できる。
問題は、どれぐらいの時間、持つかということだが、フル充電状態で、消費電流200mA×2台、100mA×6台のペダルを使用した場合、約8時間の使用が可能となっている(メーカー発表値)。もちろん、全部、アイソレートされている仕様で、アダプターを使っての使用も可能だ。ちなみにUSB出力ケーブルを使えば、スマホの充電も可能!

■POWER CARRIER VA-R8が通販で購入可能■
○イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/600843

○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/vtlaud-va-r8


POWER CARRIER VA-05 ADJ
¥9,500+税

仕様〉
●インプット:DC 12V、2,000mA
●アウトプット: 9v →300mA(最大)×3、9v/12v/18v→ 500mA(最大)×2
●外形寸法:111.5(幅)×21.3(高さ)×60(奥行き)㎜
●重量:134g
●付属品:AC/DCアダプター、DCケーブル(60cm ストレート/L型)×5

より小型化したモデル。小型化し厚さも薄くすることで、小スペースのボードに最適。エフェクターを3〜4台ぐらい直列で使用しているギタリスト/ベーシストには、オススメしたいモデル。
また、大型ボードでVA-08 Mk-
を使用している場合、このVA-05 ADJをプラスして電源を増やすことも可能だ。2台使用することで、デジタルとアナログを分けて電源を供給するという使い方もできる。

■POWER CARRIER VA-05 ADJが通販で購入可能■
○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/vtlaud-va-05-adj


POWER CARRIER VA-01
¥7,000+税

仕様〉
インプット:DC18V、1,000mA
●アウトプット: 9v →100mA×7、9v →500mA×1、12v →100mA×1、18v →100mA×1
●外形寸法:158(幅)×33(高さ)×47(奥行き)㎜
●重量:145g
●付属品:AC/DC アダプター、DCケーブル(60cm ストレート/L型)×10、ユーザー・マニュアル

コスト・パフォーマンスに優れたモデルで、アイソレートされていないパワー・サプライ。アイソレートされてないものの、そこはヴァイタル・オーディオらしく信頼できる設計になっておりノイズ対策も考えられている。アナログ・エフェクターのみを使用するギタリスト/ベーシストならば、こちらでも充分に対応可能だ。

■POWER CARRIER VA-R8が通販で購入可能■
○イケベ楽器
https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/499084

○ミュージックランドKEY
https://www.musicland.co.jp/fs/musiclandkey/vtlaud-va-01


POWER CARRIER VA-12
¥18,000+税

仕様〉
●インプット:DC12V、3,000mA
●アウトプット: 9v →300mA(最大)×9、9v/12v/18v→ 500mA(最大)×3 ●外形寸法:192(幅)×32(高さ)×70(奥行き)㎜
●重量:368g
●付属品:AC/DC アダプター×1、DCケーブル(
60cm ストレート/L型)×12、ユーザー・マニュアル

今後発売を予定している最新モデル。
VA-08 Mk-
が8ポートだったのに対し12ポートに増やして、より大型のエフェクト・ボードに対応できるように、ということをコンセプトをもとに開発。これまでは、9v/12v/18vに可変できるポートが2つだったが、それを3つに増設。容量的にもデジタル・エフェクターに向けて500mAまでのポートも設けている。もちろん、全部、アイソレートされている仕様だ。

問:株式会社フックアップ
https://hookup.co.jp/products/vital-audio