及川樹京(マーデラス)がエモなペダルを試奏!

ペダルを踏み込むことで効果が変化するエフェクター。このタイプでは、ワウ・ペダルが頭に浮かぶかもしれないが、他にもさまざまなタイプが登場している。そんなエモーショナルな表現に欠かせない7台のペダルを、マーデラスの及川樹京がチェックしてくれた。合わせて、それぞれのモデルのエモーショナル度も採点!!

 

◎歪みの量をペダルで、リアル・タイムでコントロール

●ERNiE BALL 6183 EXPRESSION OVERDRIVE ¥27,500+税

〈仕様〉 ●コントロール:ドライヴ、トーン、ブースト ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:92(幅)×55(高さ)×192(奥行き)mm ●重量:894g ●電源:9vDCアダプター

樹京オーバードライブの量をリアル・タイムでコントロールするというアイディアがすごいです。ありそうで、なかった。歪み自体の傾向は、モダンなトーンというよりもヴィンテージ寄りだと感じました。アンプ・ライクなキャラクターで、個人的にも好みです。けしてゴリゴリに歪むわけではなく、ブースター向きとも言えると思いますね。
 コントロールは3つ付いているんですが、とくにトーンの効きがよくて、絞るといい感じにこもった感じが出せるし、持ち上げるとギラギラしたトーンにできます。それも劇的に変わるというわけではなく、ギターやアンプのキャラクターを活かしつつ、という感じです。このトーン・コントロールとドライヴ・コントロールで音色の幅を付けられますし、リード用のヌケてほしいなという音も作れますね。最大5dBのブーストも可能ですし、ペダルを上下させることで、かなり歪みの表情を使い分けられます。
 オススメは、アンプ側をクランチぐらいのセッティングにして、ペダルを踏んでいない時、半分ぐらい踏んだ時、すべて踏んだ時の3段階で、バッキングとソロの音色を1台で踏み分けるという使い方ですね。本体サイズはやや小さく感じますが、思ったより踏みやすいですし、微妙なペダルの上げ下げもしやすいです。

サウンドの変化度:★★★☆☆
エモーショナル度:★★★☆☆

▲ペダルの開け閉めで、あらかじめ設定していた範囲で歪みの量をコントロールできる。下のディレイも同様だ

▲ドライヴとトーンで歪みを作り、好みで最大5dBのブーストを加えられる

 

◎ディレイやリバーブを自在に変えられる、ライヴ向きな1台

●ERNiE BALL 6184 AMBIENT DELAY ¥30,000+税

〈仕様〉 ●コントロール:リバーブ、フィードバック、タイム、ディレイ音量用トリム・ポット(本体内部) ●入出力端子:インプット、タップ・テンポ・イン、アウトプット ●外形寸法:92(幅)×55(高さ)×192(奥行き)mm ●重量:913g ●電源:9vDCアダプター

樹京EXPRESSION OVERDRIVEと同じく、ペダルでディレイやリバーブをコントロールできるペダルです。ディレイの設定も、フィードバックでディレイの回数、タイムでディレイの速さを決めるだけとシンプルでわかりやすいのもいいですね。踏み込んだ状態が基本となるようにセッティングして、バラードのソロなどではペダルを目一杯踏み込んでディレイを深めにかけるなんてことも簡単にできます。
 歪み系もそうですが、コンパクト・エフェクターだと、曲ごとにいちいちツマミを回すのも大変ですから。フレーズ中にペダルを上下させることで不思議な効果が得られますし、そういった意味でもライヴ向きなペダルだと思います。プレート・タイプのリバーブも付いていて、好みの深さでディレイに加えることができるのもポイントです。

サウンドの変化度:★★★☆☆
エモーショナル度:★★★☆☆

▲本体内部のトリム・ポットで、基本となるディレイの音量を設定できる

 

◎5種類のモードを切り替えられる、最新モデルのトレモロ!

●ERNiE BALL EXPRESSION TREMOLO ¥30,000(予価+税/今秋発売予定)

〈仕様〉 ●コントロール:デプス、レイト、ウェーヴ・セレクト(ランプ・アップ/ランプ・ダウン/サイン/_スクウェア/ハーモニック)、リバーブ ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:92(幅)×55(高さ)×192(奥行き)mm ●重量:900g ●電源:9vDCアダプター

樹京メタルやハード・ロックのサウンドでは、なかなかトレモロを使うことがないので、興味深くチェックしました。
 まず、一般的なトレモロ・エフェクターと同じようにデプスのツマミでトレモロの深さを調整して、レイトのツマミでトレモロのスピードを調整するというのが、シンプルでわかりやすいですね。トレモロのタイプも5種類から選べて、デプスやレイトの設定と組み合わせることで、なめらかなトレモロや飛び道具的なサウンド、SE的なフレーズに合ったサウンドが得られます。どれも個性的で迷うところですが、個人的には左から4番目の“スクウェア”のかかり方が気に入りましたね。
 そして、最大のポイントはそのトレモロ効果をペダルで自在にコントロールできることですよね。ペダルの上下でトレモロのかかり具合を無段階にコントロールできるので、シンセサイザーで弾いているような、どんどんエフェクト量が変わっていくフレーズもOKです。なかなかギターで表現するのは難しいフレーズも、このトレモロなら足下で簡単に弾けます。あと、リバーブも付いているのですが、タイプとしてはスプリング・リバーブ系になりますね。リバーブはペダルの開け閉めでかかり方の深さが変わるという感じではなく、ツマミで設定した量がつねにかかってくれるという形ですね。ツマミを左に回しきれば、リバーブはゼロにできます。
 エモーショナルな演奏という印象は弱いですが、もっと使い込んで、可能性を探ってみたいですね。曲作りのアイディアも広がりそうですし、紫色のボディも気に入りました。この色もいいですよ。

サウンドの変化度:★★★★☆
エモーショナル度:★★☆☆☆

▲デプスとレイトのツマミはプッシュ/プッシュ式。オンにすると、LEDが点灯し、任意の設定が行なえる。オフにすると、ツマミの位置にかかわらず、最大値で効くようになっている

▲トレモロのタイプは5種類。左から時計回りで、ランプ・アップ、ランプ・ダウン、サイン、スクウェア、ハーモニーとなっている。効果がイラストで表わされているのでわかりやすい

 

◎ワーミー・リコシェを愛用する樹京が、ワーミーをチェック!

●DigiTech Whammy ¥33,000+税

〈仕様〉 ●コントロール:セレクター・ノブ(ハーモニー/ワーミー/デチューン)、クラシック/コード・スイッチ ●入出力端子:インプット、MIDIイン、アウトプット ●外形寸法:170(幅)×61(高さ)×196(奥行き)mm ●重量:1.37kg ●電源:9vDCアダプター

樹京以前、デジテックのラック内に入っていたワーミーをエクスプレッション・ペダルを割り当てて使ったことがあったり、最近ではワーミー・リコシェを入手して、マーデラスのアルバムのレコーディングで使ったんですが、本家のワーミーそのものは初めて踏みました。やっぱり、いいですね、ワーミー。踏んだ速度や幅で変化度を決められるのがいいし、その変化もいろいろ選べる。実際に踏んでみて、レコーディングだけでなく、よりライヴ向きなエフェクターだなと感じました。
 この5代目ワーミーもロング・セラーで、5代目となって、3つのモードが選べるようになっています。まず、ワーミー・モードでは僕はオクターヴのアップかダウンを基本に使いたいですね。使い勝手がよく、わかりやすく響いてくれます。飛び道具的として使いたい時は2オクターヴ・アップがいいですね。そうした“おっ!”と思うサウンドをノブを回すだけで選べ、あとはペダルを踏むだけというシンプルさ。飛び道具と言えば、DIVE BOMBがすごい。3オクターヴ下の音だから、1弦を弾いてもお腹をえぐられるような低音まで、なめらかに下げることができます。あと、単音だけでなくコードでもワーミー効果が使えるのもいいですね。ハーモニー・モードもいろいろ選べますが、僕は、オクターヴ・アップ/オクターヴ・ダウンが気に入りました。デチューンも効果的で、浅くかかるSHALLOWはリードに太さを加えたい時にいいかと思います。深くかかるDEEPはトレモロっぽいニュアンスが出せるので、クリーン・トーンで使うとより効果的だと思います。こうした効果を、足下で無段階にリアル・タイムでコントロールできるのは、オン/オフ・タイプのエフェクターではムリなところですからね。
 フレーズにインパクトを付けたい時やアームが付いていないギターでアーミングのような効果を出したい時など、アイディアしだいでいろいろ使えるし、音ヤセも感じないです。エモーショナルなプレイに最適だし、さすがワーミーですね。

サウンドの変化度:★★★★★
エモーショナル度:★★★★☆

▲従来のような単音のフレーズだけでなく、ミニ・スイッチをコード側にすれば、和音でもワーミー効果が得られる

▲コーラス的な効果が得られるデチューン・モード。浅めのSHALLOWと深めのDEEPの2種類から選べる

 

◎三者三様のヴォリューム・ペダルを踏み比べ!

●DOD Mini Volume ¥18,000+税

〈仕様〉 ●入出力端子:インプット、アウトプット ●外形寸法:76(幅)×61(高さ)×127(奥行き)mm ●重量:894g

樹京マーデラスではヴォリューム・ペダルは使っていないんですが、他の現場などでヴォリュームの上げ下げでクランチを作ったり、ブレイクで音を切りたいんだけど、手元でヴォリュームを絞るのが難しい時に使ったりしますね。
 では、まず、DODMini Volumeですが、ホントに小さいですね! チューナー・アウトもなくシンプルです。踏んでみた感じは、自分が大きなペダルを使っていたこともあるんですが、慣れないうちは細かくヴォリュームをコントロールするのが難しいかもしれない。でも、個人的な感覚ですが、つま先側ではなくでペダルを踏めば、細かいこともやりやすいと思います。踏み心地は、少し硬いというかトルクがある印象で、ヴォリュームの変化具合は、一般的なヴォリューム・ペダルと同じですね。なめらかに変わっていきます。音ヤセもないし、エフェクター・ボードを小さくしたい人にオススメですね。

サウンドの変化度:★☆☆☆☆
エモーショナル度:★★☆☆☆

▲ヴォリューム・ペダルも手のひらサイズまで小さくなった。エフェクター・ボードにも収まりやすい

●ERNiE BALL 6166 VOLUME PEDAL ¥23,500+税

〈仕様〉 ●入出力端子:インプット、アウトプット、チューナー・アウト ●外形寸法:59(幅)×102(高さ)×280(奥行き)mm(ゴム脚および突起物を含まず) ●重量:1,693g

樹京アーニーボールVolume Pedalは、DODのペダルと比べるとサイズが大きいぶん、踏み心地にも安定感があります。動きもなめらかで、急にガクっとなることもないし足下で狙ったゲインやヴォリュームを作りやすいです。フレーズによっては、演奏しながら右手でヴォリュームをコントロールするより、足下で行なったほうがやりやすかったりしますしね。ヴォリュームを絞った時のアンプの反応もすごいスムーズで、使える音色のまま、ゲインを下げることができます。

サウンドの変化度:★☆☆☆☆
エモーショナル度:★★★★☆

▲今回試奏した3台のヴォリューム・ペダルを並べてみた。左からアーニーボールの6166 VOLUME PEDAL、アーニーボールの6182 MVP MOST VALUABLE PEDAL、DODのMini Volume。サイズの違いがわかってもらえるだろうか?

 

●ERNiE BALL 6182 MVP MOST VALUABLE PEDAL ¥23,500+税

〈仕様〉 ●入出力端子:インプット、アウトプット、チューナー・アウト ●外形寸法:59(幅)×102(高さ)×280(奥行き)mm(ゴム脚および突起物を含まず) ●重量:1,693g

樹京アーニーボールMVPは、ミニマム・ヴォリュームとゲイン・ヴォリュームという2種類のコントロールが付いています。ミニマム・ヴォリュームのツマミで、ペダルを上げた時の音量をゼロから50%までの範囲で調整できます。僕なら絞った時にスタンダードなバッキングに合った音量やゲインにセットして、踏み込んだ時にリード向きのゲインが得られるように調整します。そういう時はふつうはオーバードライブを使いますけど、機種によってはオン/オフする時のポップ・ノイズが気になることがあります。でも、このMVPならポップ・ノイズの心配がない。サイズはVolume Pedalより小さいですが、そんなに差は感じないというか、踏んでいて違和感はないです。ゲインはフルに上げても歪みすぎないというか、色づけのないクリーン・ブースター的にレベルが持ち上がる印象を受けました。ミニマム・ヴォリュームが付いているヴォリューム・ペダルは、他のメーカーにもあるんですが、ゲイン・コントロールまで付いているのは珍しいし、より好みのサウンドを作れるのがいいですよ。

サウンドの変化度:★★☆☆☆
エモーショナル度:★★★★☆

▲ミニマム・ヴォリュームのツマミで、ペダルを上げた時の音量をコントロールできる

 

■ヴォリューム・ペダルの接続順■
ヴォリューム・ペダルを複数のエフェクターとともに使う時、ヴォリューム・ペダルはいちばん最初につなぐことが多い。この場合、音量の変化と同時にその後のエフェクターの効き具合も変化する。最後につなぐと音量のみをコントロールできるが、アンプのみで歪みを作る場合は、その歪み量がヴォリューム・ペダルの操作によって変わる。これを避けるには、ヴォリューム・ペダルをアンプのセンド/リターンにつなぐという方法がある。

■試奏を終えて■
樹京:今回、試奏した中で、とくに印象に残ったのはワーミーですね。ライヴで使ってみたいと思いました。そして、ヴォリューム・ペダルもあらためていいものだなと。ボードに入れておくと便利ですし、なかでもMVPはすごくいいです。お気に入りです。

問:株式会社神田商会
https://www.kandashokai.co.jp

◎及川樹京(おいかわききょう):マーデラスのギタリストとして活躍中。テクニカルなプレイを軸に迫るメタル・ギタリストだ。マーデラスは5月16日にサード・アルバム『Mardelas Ⅲ』を発表、このリリースに伴うツアーも決定している。

※写真はマーデラスの『Mardelas Ⅲ』
キングレコード KICS-3705
¥3,000+税 2018年5月16日発売