アウトレイジの35周年記念ライヴをレポート!

アウトレイジが、1987年に発表した4曲入りEP『Outrage』でメタル・シーンに衝撃を与えてから35年。
このアニヴァーサリーに合わせて、さまざまな企画が進められている。その1つが4月24日に地元の名古屋で開催された35周年記念ライヴだ。『The Final Day』(2021年発表)の30周年記念盤ではオーケストラによるカヴァーが実現したが、今度はステージでの共演も! そのもようをレポートしよう!
5月20日に名古屋で先行公開、6月3日より全国で公開される映画『鋼音色の空の彼方へ』の情報も合わせてお届けしよう!

▲NAOKI(vo)

▲阿部洋介(g)

▲安井義博(g)

▲丹下眞也(g)

 

アウトレイジ・デビュー35周年を記念する特別公演が424日、Zepp Nagoyaにて行なわれた。
この日はOutrageous Philharmonic Orchestraこと指揮者に柴田 祥を迎えたセントラル愛知交響楽団との共演だ。
ステージは通称“ペケレイジ”のバックドロップ、そして一段高い位置にオーケストラ・セット、その前にアウトレイジ・セットが組まれている。大きなZepp Nagoyaステージをフルに使ったさまはちょっとした要塞のようでもあり壮観で、それを見ただけでも今晩が特別な夜になることが予想される。

開演時間ジャストに場内が暗転し、アウトレイジ登場のSEであるレッド・ツェッペリン「Immigrant Song」が爆音で流れる中を交響楽団メンバーがステージに登場。
通常の演奏会ではこういった演出がないのでどんな感じだったか聞いてみたいところだ。それぞれの席に座りSEが鳴り止めると、オーボエの音に合わせて調弦が始まる。今度はいつものアウトレイジのライヴとは違った始まり方に来場したファンの中に期待と緊張が合わさったような空気が流れる。
調弦が終わると大きな拍手の中、指揮者の柴田が登場。静かに構えたタクトがゆっくりと動き出すと鐘の音、そして弦楽器の音が静かに「My Final Day」のイントロを紡ぎだす。
そこから一気に演奏が走りだすといつもアウトレイジの面々が作り出す高揚感とは違った顔が現われる。
オーケストラによって再構築された「My Final Day」の生み出す緊張感が会場を包み、曲が終わると感嘆の拍手が沸き起こる。
続く「Madness」では原曲の持つ激しさを荘厳なものへと変換させ、弦楽器隊による畳みかけるリズムはどことなくムソルグスキーの「はげ山の一夜」を思わせる。「Follow」は東洋を感じさせる原曲のヘヴィネスがおどろおどろしくアレンジされ、管楽器が前面に打ち出されることによって個人的にはチェンバー・ロックも頭をよぎった。
音が静かに消えていくと魅せられていた場内から一拍置いて大きな拍手が沸き起こる。
勇壮さを前面に打ち出した「Wings」ではサックスによるジャジーで激渋なソロが何とも心憎い。オーケストラ編の最後の曲は「Great Blue」。タクトが大きくゆったり動くとヴァイオリンやチェロといった弦楽器隊を軸に揺蕩う(たゆたう)、美しいメロディが奏でられ、コントラバスの輪郭の丸い太く深い音が重なっていく。エンディングに向け打楽器隊が加わっていくと曲は盛り上がり、最後はクラリネットと思われる楽器が美しいメロディを響かせて終了となった。

▲第1部は、Outrageous Philharmonic Orchestra

 

大きな拍手を浴びて丹下眞也(ds)がステージ、そしてドラム・セットへと駆け上がり、Outrageous Philharmonic Orchestraへさらなる賞賛の拍手を求める。続いて阿部洋介(g)、安井義博(b)、最後にNAOKI(vo)が登場する。ここからアウトレイジへとバトンタッチ、NAOKIが“メッチャ緊張しとる”と言えば阿部が“謎のテンションだよね“と続く。
通常のライヴとは違う様相にメンバーからはいつもと違う緊張が伝わってくる。しかし、阿部のギターからメロディが流れNAOKIの声が続くといつもの顔となりスイッチが切り替わる。それまでイスに座っていたファンもオーケストラ仕様からいつものライヴへと切り替え総立ちとなっていた。ブルーのライトが眩しく「Rise」が始まるとダイ・ハード!の掛け声に合わせて多くの拳が振り上げられ、NAOKIの咆哮一発とともに曲が疾走していく。
そのまま快活なタテノリ感ある「Machete Ⅲ」へとなだれ込み、安井とNAOKIの掛け合いがファンの身体を揺らしていく。そこからコア色ある「Let My Ass Go」、不穏でクセの強いリズムとヘヴィなグルーブが交じり合う「Draggin’ Me Down(Fear is)」とレアな曲が続く。間髪入れずに阿部のギターから「Megalomania」のリフがはじき出されると丹下が来いよ!とばかりに手を挙げる。
NAOKIが小型のマイクを操り、ステージからは眩しい光が場内へ向かって放たれる。咆哮と呼んだほうが相応しいサビのコーラスに合わせこのご時世で声の出せないファンの手がステージへといくつも伸びていく。丹下がファンへ感謝の言葉を述べNAOKIが少しおちゃらけながらそれに続くと、怒涛のドラミングから映画『鋼音色の空の彼方へ』劇中歌の新曲「Phycho Flowers」が始まった。スタスタしたキャッチーさとパンキッシュなノリがミックスした曲はアウトレイジが持つ別ルーツの引き出しを開けた感じ。そう言えば安井の出で立ちはどこかラモーンズを思わせるものだった。その安井が最後に両手でメロイック・サインを掲げアウトレイジ編は終了となった。

▲第2部はアウトレイジのセクション

 

丹下がここからコラボ・タイムと告げ、Outrageous Philharmonic Orchestraを呼び込む。
先ほどとは違いオーケストラの面々はメタルTシャツを着こんでいて、否が応でも期待感を高めていく。再び調弦が始めると期待感の中に緊張感がさらに高まり混ざり合い、その空気を切り裂くように「My Final Day」のイントロSEが静かに流れだす。最初はアウトレイジの爆発力に飲み込まれた感があったオーケストラだったが次第にシンクロ率を高め、アウトレイジとオーケストラとのバチバチのバトル。特に阿部のギターとオーケストラの弦楽器隊のスリリングな攻防は興奮させられた。後半のNAOKIの語りのようなパートではオーケストラ効果もあって勇壮さがプラスされた感じだった。
続く「Sad Survivor」では逆襲とばかり序盤からアウトレイジの音の上からオーケストラが分厚く被さる様相で、かなり圧巻。会場の空気をあらゆる方向から揺らしてくる。目を閉じるとその感覚はさらに倍増される。丹下のドラムとテインパニ奏者の叩き合いも耳を奪われた。
少し冷めたブルー・ライトがステージを照らすともの悲しいフルートの音が「Veiled Sky」のメロディを奏で静かに会場の隅まで染みわたっていく。ステージ中央ではNAOKIが身体を大きく動かし時にディープな声で、時に叫びファンの感情に訴えかける。静と動の対比が激しいこの曲ではオーケストラ・アレンジによって曲のドラマ性を高め、エンディングに向けいくつもの盛り上がりと見せ場を作り上げていく。
ここでアウトレイジの面々はNAOKIを残しステージを去り、ピンライトが彼を照らすと静かに「River」を歌いだす。その声にヴァイオリンを軸とした優しく悲しいオーケストラの演奏が広がっていく。NAOKIの感情をつなぎ留めるようにタクトが細やかに宙を動いている。会場の壁には大きなNAOKIの影が映し出されゆらゆらと揺れている。ラストはジャジーな雰囲気を交えながらオーケストラの手により橋本の感情を帰結させた。
NAOKIがステージを去ると今度はアウトレイジ演奏陣がステージに再び姿を現わす。トリオ時代の代表曲と言ってもいい「Deadbeat」がプレイされる。彼らの中でもワイルドなノリで言えば群を抜いているこの曲とオーケストラのコラボレーションはミスマッチ的なおもしろさにあふれている。安井の野獣感タップリな咆哮もこの日はどことなく紳士的な感じがあった。
コントラバスの太い音が「Visions」の始まりを告げる。オーケストラが加わることによって荘厳なスリリング感が高まったこの曲は表情がかなり変わった印象を受けた。次は映画『鋼音色の空の彼方へ』劇中歌となる新曲「Summer Rain」だったのだがイントロでちょっとしたミス。オーケストラとの共演でちょっと緊張感も流れていた会場の空気が少し和んだ感じもあった。仕切り直して「Summer Rain」が始まると空気がガラッと変わる。アウトレイジ版ロック・オペラとも言うべきこの曲は何とも言えぬ幸福感にあふれ、オーケストラ・アレンジによって感情がより剥き出しにさせられる。
デビュー35年でまた新たな扉をこじ開けたこの曲により会場に温かく優しい音がミラーボールの光とともに広がっていく。静かに曲が終わり会場に拍手が鳴り響くが、シンバル・カウントを合図に「Fangs」が始まると今度は力で会場のファンをねじ伏せていく。ここでは再びアウトレイジ vs オーケストラの様相に随所で繰り広げられるバトルが会場のテンションをグングン上げていく。丹下が立ち上がりファンを煽りバスドラを連打すると、ファンは手を上げ大きな拍手でそれに応える。そこに安井のベースが重なり「World Slow Down」が始まる。キャッチーだが心悲しい一面もあるこの曲は本編最後を飾るにふさわしい。丹下の声に導かれオーケストラ・パートが演奏とともに紹介される。NAOKIが感謝の言葉を述べ、楽しかった時間が終わりに向かっていることを実感させる。そのNAOKIのカウントに導かれ最後の盛り上がり後にパフォーマンスは感動と高揚感に満ちて終了となった。

▲第3部はアウトレイジとOutrageous Philharmonic Orchestraとの共演だ!

 

アンコール前に記念撮影。
ステージ上も満員となった会場のファンも本当にいい顔をしている。この日、アウトレイジとOutrageous Philharmonic Orchestraとの競演の最後の曲に選ばれたのは初期からの代表曲であり名曲「Under Control of Law」。ここではアウトレイジとOutrageous Philharmonic Orchestraによって生み出された音の壁が会場を支配する。曲が終わり誰もいなくなったステージにメンバーを引っ張り出すべく2度目のアンコールを求める大きな拍手が鳴り響く。その拍手に応えるべくアウトレイジの4人がステージに姿を現わす。後ろにOutrageous Philharmonic Orchestraの姿はなく、“なんかしょぼくなったよ”とNAOKIが会場の笑いを誘い、阿部が“30人ぐらい減ったから”とそれに続く。“30人減ったらみんなのパワーで補ってよ!”と丹下が上手く切り返し、“最後ぶっ飛ばしていきましょう!!”と叫び「Step On It」が最後を締めくくるべく暴れだす。
自主制作デビュー・ミニ・アルバムに収録されたこの曲はアウトレイジ35周年記念イヴェントの最後を飾るにふさわしく、ファンはヘッド・バンギングでそれに応えていた。エンディングはいつもと違い、クイーンの「 We Will Rock You」的ノリを加えていたのは、この日来たファンへ特別なサービスでもあったろう。最後にステージ下手、中央、上手とファンに向かって感謝の意を込めた丹下の礼によってこの日は終了となった。

35年を迎え、次にどんな景色をファンに見せてくれるのか、それが楽しみにもなるこの日のステージだった。
残念ながらこの日会場に足を運ぶことができずに泣いているファンも多いと思うのでこのスペシャルな一夜は作品としてリリースしてほしいところだ。

 

そして翌日はデビュー35周年記念映画『鋼音色の空の彼方へ』舞台挨拶付き先行プレミア上映会。
監督の山田貴教、出演の秋田卓郎と岡陽介、アウトレイジからは丹下眞也と阿部洋介が登壇。裏話を交えながら作品について語った後に本編が上映。
ネタバレになるのでストーリーについては省くが、それを抜きにしても2重構造となったそれは一言で語るのは難しい。アウトレイジをフィルターとした青春群像としても楽しめるだけでなく、その裏に流れる本質を探し出せればより新たなおもしろ味も味わえるだろう。メタル・ファンであれば役者が着ているTシャツや随所で登場する小道具、そしてカメオ出演している“誰かさん”も楽しめるだろう。これからの一般公開も楽しみにしている。

▲4月25日に行なわれた、舞台挨拶付きの『鋼音色の空の彼方へ』先行プレミア上映会でのひとこま。


OUTRAGE 35th Anniversary Special Live
OUTRAGE & Outrageous Philharmonic Orchestra

2022424日(日)=Zepp Nagoya

セット・リスト
〈Outrageous Philharmonic Orchestra〉
(1)My Final Day
(2)Madness
(3)Follow
(4)Wings
(5)Great Blue
〈OUTRAGE〉
(6)Rise
(7)Machete
(8)Let My Ass Go
(9)Draggin’ Me Down(Fear is)
(10)Megalomania
(11)Phycho Flowers
〈 OUTRAGE & Outrageous Philharmonic Orchestra〉
(12)My Final Day
(13)Sad Survivor
(14)Veiled Sky
(15)River
(16)Deadbeat
(17)Visions
(18)Summer Rain
(19)Fangs
(20)World Slow Down
Encore 1
〈 OUTRAGE & Outrageous Philharmonic Orchestra〉
(21)Under Control Of Law
Encore 2
〈OUTRAGE〉
(22)Step On It

Outrageous Philharmonic Orchestra=指揮:柴田 祥、編曲:小塚 憲二、演奏:セントラル愛知交響楽団(http://www.caso.jp/


『鋼音色の空の彼方へ』情報

アウトレイジの歴史を辿るヒストリー映画への出演が決まった4人の若き俳優達。その彼らが映画を撮影していく中で成長していくという劇中映画となっている。
アウトレイジのメンバーを演じる4人の俳優は名古屋で活躍しており、撮影も拗ねて名古屋で行なわれている。

5月20日には名古屋の3つの映画館で先行公開され、6月3日より宮城や東京、神奈川、三重、大阪、京都、滋賀で公開。7月1 日より長野でも公開される。
上映される映画館については下記のサイトを。
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=haganeiro

また、公式サイトではキャストに焦点を当てたショート予告映像などが続々と公開されている。
https://haganeiro.com/trailer/

アウトレイジのメンバーもカメオ出演しているという『鋼音色の空の彼方へ』。
最新情報が随時、公式サイトで公開されているのでチェックしてみよう。

映画『鋼音色の空の彼方へ』公式サイト
https://haganeiro.com/

 

アウトレイジ公式サイト
https://outrage-jp.com/