GEORGE MURASAKI & MARINER、沖縄での一夜をレポート!

伝説のハード・ロック・バンド、紫。その紫の解散後、リーダーであったジョージ紫が結成したのがGEORGE MURASAKI & MARINERだった。
彼らが残した2枚のアルバムが再発されたことに合わせて、沖縄でライヴが開催された。その模様をレポートしよう!

沖縄、いや日本ハード・ロック史を語るうえでけして外すことのできない紫。
その中心人物であるジョージ紫(kb)が紫脱退後にアメリカ人メンバーを集めて1979年に結成したのがGEORGE MURASAKI & MARINER(以下、MARINER)だった。世界的にハード・ロックからヘヴィ・メタルへの移行期、その波にMARINERも乗るかと期待されていたが『Mariner One』と『Mariner Two』の2枚のアルバムを残してたった1年で解散してしまった。
その2枚のアルバムはプレミアム・アイテムとなっていたが、今年CDで再発されたことを記念して、沖縄市にあるミュージックタウン音市場にて復活ライヴが7月31日に行なわれた。
メンバーはジョージ紫、ジョン“JJ”パターソン(vo)のオリジナル・メンバーに、沖縄を拠点に活動している8-BALLメンバーであるケイイチ(g)、クリス(b)、レオン(ds)がプレイするとアナウンスされていたが、当日になって同じく8-BALLのレイ(vo)も参加すると耳にした。
ご存じかもしれないが、レイとレオンはジョージ紫の息子である。オリジナルMARINERは活動期間がたった1年ということでライヴ回数もかなり少なかったとのことで、それだけでもこの日がどれだけプレミアムなものだったかわかるだろう。
台風直撃の悪天候での開催だったが、沖縄からはもちろん本州からも足を運んだ熱心なファンもチラホラといた。会場に入るとステージ前にはMARINERのロゴがスクリーンに大きく映し出され、それだけでかなり興奮が高まっていく。

幻想的なイントロに導かれ『Mariner One』のオープニングを飾る「Dreamer」からスタート。
心地よいメロディにグルーヴ、JJの伸びある声、ジョージ紫によるハモンド・オルガンの音がジワジワと感動を刺激する。そのままアルバムと同じく「Long Way From Home」へと雪崩れ込む。クリスとレオンによるリズム隊のプレイはズンっと腹の奥まで響き、アグレッションが増しアップグレードした印象を受ける。2曲を終えて会場の温かい雰囲気にホッとした印象を受けるJJが短めなMCをした後は、ケイイチの哀愁あるギターとJJの情感が交差する「When The Morning Comes」が観ている者の感情を溶かす。
続くタテノリのナンバー「Starfreet Invasion」ではそれまでバックコーラスといった感じだったレイが前に出てJJとヴォーカル・バトルを展開する。ラウドネスの高崎晃によるプロジェクト、AKIRA-EVOLUTIONのヴォーカルを務める実力者レイの本領発揮といった感じで、この曲ではJJは彼に華を持たせた印象を受けた。
そして『Mariner Two』からスピーディな「I´m Alone」。曲に合わせて大きく身体を揺らすファンも多い。大きな拍手の中、JJは感謝の言葉を述べ“大好きな曲”という言葉に続いてタイトル・コールされたのは『Mariner One』のラストを飾るスケールの大きいバラード調な「Visions Of Fantasy」。
透明感あふれるメロディがジンワリと心の奥にまで染みわたっていく。こういったタイプの曲でのJJの表現力は絶品である。そしてジョージ紫が奏でるキーボードの音が感動に奥行きを与えていく。心を震わせた余韻を残して第一部は終了となった。

▲JJ(vo)とジョージ紫(kb)

15分ほどの休憩後にJJ以外のメンバーによるインスト曲で第2部がスタート。
少しディープ・パープルが頭をよぎるスピード感あふれるナンバーで、MARINERの曲ではないよなと思っていたのだが、後から聞いた話だとジョージ紫がゲスト参加したオルガン・プレイヤーのKANKAWAのソロ作に収録された「7th Heaven Boogie」とのこと。これはちょっとしたサプライズと言えるだろう。
そのまま間髪入れず「Man Hunter」が始まるとJJがステージに姿を現わす。ノリのよさの中にもアダルト感を漂わせるこの曲はMARINERの特異性を表わしているのではないだろうか。
JJMCでジョージ紫を少しイジリ会場の雰囲気を柔らかくすると、過去に一度もプレイしたことがないという「Compassion」のメロディが流れる。
起承転結のメリハリが効いてドラマ性の高い曲が過去にプレイされなかったというのはちょっと驚きであり、このレア曲が終わると場内からは感嘆の大きな拍手が沸き上がる。
次にプレイされたのは『Mariner Two』のラストを飾る叙情的な大作「For Whom The Bell Tolls」だったが、プレイする前にこの作品のトリビアが語られた。それはレコーディングしたスタジオは完成して1年ぐらいだったが、後に有名になってマイケル・ジャクソンやTOTOなどが使用したとのことだった。
過去にMARINAERを観たことある人と尋ねた後にプレイされたのは、彼らのテーマ曲と言ってもよい「The Ancient Mariner」だ。キャッチーなメロディとともに疾走し、コーラスも美しい曲で大きく手を振りあげているファンもいる。
間髪入れずレオンのシンバル・カウントを合図に始まったのはもっともスピード感がありメタリックな質感もある「Demon King」。
ここではヴォーカルがJJからレイにバトンタッチ。力強さあるレイの声が曲にパワーを与える。曲が終わるとJJがレイに拍手をと場内に声をかける。
本編ラストとなったのは“私が最初に作ったオリジナル曲”と英語で紹介していたと思う「Peaceful」。素朴ながら大陸的広がりのある曲で、曲終盤にはケイイチ、レオン、クリス、ジョージ紫の順に紹介しながらそれぞれのソロを挟み込んでいった。曲が終わり、JJが感謝の言葉を述べると場内は大きな拍手に包まれていった。

一度ステージを去ったメンバーだがアンコールを求める大きな拍手の中、まずJJがステージに登場してそんな場内をうれし恥ずかしそうに少しいじって笑いを取る。
アンコール1曲目はMARINERでなく紫の「Borders Drawn In Blood」。彼らの40周年を祝うアルバム『QUASAR』からの楽曲だ。ちなみにジョージ紫はもちろん、JJやクリスも現在の紫のメンバーで『QUASAR』にも参加している。「Borders Drawn In Blood」をジックリと聴かせ、ラストは紫の代表曲の必殺「Double Dealing Woman」で締めくくった。

終演後にこの日のパフォーマンスの素晴らしさからこのメンバーで『Mariner Three』を作ってくれとメンバーに声をかけているファンもいた。その言葉にまんざらでもなさそうではなかった。
そして11月に再びMARINERがステージに立つ計画もあるそうだ。さて、運命のサイコロはどんな目を出すのだろうか?

▲ジョージ紫(kb)

▲JJ(vo)

▲レイ(vo)

▲ケイイチ(g)

▲クリス(b)

▲レオン(ds)


2022731日(日)=沖縄ミュージックタウン音市場

セット・リスト
〈第一部〉
(1)Opening
(2)Dreamer
(3)Long Way From Home
(4)When The Morning Comes
(5)Starfreet Invasion
(6)I’m Alone
(7)Visions Of Fantasy
〈第二部〉
(8)7th Heaven Boogie
(9)Man Hunter
(10)Compassion
(11)For Whom The Bell Tolls
(12)The Ancient Mariner
(13)Demon King
(14)Peaceful
Encore
(1)Borders Drawn In Blood(紫)
(2)Double Dealing Woman

レポート:別府“veppy”伸明
写真:Ryuhei Okada
https://ryuheiokada.com